カナダのザナドゥ(Xanadu Quantum Technologies Limited)は2026年10月6日、米グローバルファウンドリーズ(GlobalFoundries Inc.)の300mm半導体ラインで実用規模の光量子部品を量産する戦略的提携を発表しました。
米国300mmファブへの移管が示す量子部品の水平分業
ザナドゥとグローバルファウンドリーズの契約は、研究室主導の試作から既存半導体工場を活用した工業生産への移行を目的としています。生産はグローバルファウンドリーズが保有する米国ニューヨーク州マルタの300mm半導体製造ラインで行われます。
発表当日、ザナドゥの株価は一時5.03ドルまで買われて約16%〜17%急騰し、グローバルファウンドリーズ株も約1.4%上昇しました。資本関係や具体的な取引金額は非開示とされていますが、複数年に及ぶ製造供給体制の構築が合意されています。
両社は2022年から共同研究を開始していました。2026年にグローバルファウンドリーズが米商務省(U.S. Department of Commerce)との3億7,500万ドルの契約枠組みを完了し、量子製造ソリューション部門を正式に発足させたことで量産移管が具体化しました。
| 項目 | 詳細情報 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年10月6日 |
| 提携企業 | ザナドゥ(カナダ)、グローバルファウンドリーズ(米国) |
| 製造拠点 | 米国ニューヨーク州マルタ 300mmファブ |
| 主要製造品目 | SNSPD(光子検出器)、SiNフォトニクス基板 |
| 商業販売目標 | 2029年〜2030年 |
ザナドゥは2026年6月末時点で3億1,280万ドルの現金を保有しています。直近四半期売上高は約150万ドルから215万ドルにとどまり、2026年通期予想売上高は約920万ドルです。本格的な商業出荷ターゲットを2029年から2030年に設定しており、現行の売上規模に対して巨額の設備投資を自社単独で賄うことは困難でした。
この課題に対し、カナダ政府による1億9,500万カナダドルの先端フォトニクス製造支援を受けつつ、量産フェーズでは外部ファウンドリへ委託する水平分業モデルを選択しました。設備投資リスクを抑えながら試作から量産へのスケールアップを図る動きが確認できます。
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窒化シリコン光回路と超伝導検出器のCMOS互換プロセス
今回の提携で製造対象となる中核技術は、超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)と超低損失窒化シリコン(SiN)フォトニクス回路の2系統です。
光量子計算では、単一光子の生成、光回路での演算、そして終端での検出が基本ステップとなります。計算の規模を拡大する上でのボトルネックは、導波路内での光損失と光子検出精度の低さでした。
窒化シリコン(SiN)は、従来のシリコン(Si)よりもバンドギャップが広く、光通信波長帯での伝搬損失を極小化できます。グローバルファウンドリーズの300mmウェハプロセスへSiN薄膜の成膜・加工を落とし込むことで、ウェハ面内での線幅ばらつきをナノメートル単位で制御可能になります。
SNSPDは、光パルス内に含まれる単一光子を高精度に識別して読み出す光子数識別(PNR)センサーとして機能します。超伝導状態を維持する必要があるため冷却系との統合が必須ですが、従来の個別実装では素子ごとの検出効率に偏りが生じていました。
ザナドゥ創業者兼CEOのクリスチャン・ウィードブルック博士(Dr. Christian Weedbrook)は、量子技術を大量製造ラインへ移行することが実用規模の提供に不可欠であるとコメントしています。専用ラインを新設するのではなく、実績のあるCMOS半導体プラットフォームへ超伝導薄膜プロセスを組み込む手法が採られました。
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光電融合を推進する日本企業が直面する製造インフラの壁
本提携は、光インターコネクトや光電融合デバイスの開発を進める日本の半導体・通信サプライチェーンに対して明確な指針を与えます。
NTTが主導するIOWN構想をはじめ、国内では光導波路とシリコンフォトニクスを組み合わせた低消費電力チップの開発が進められています。古河電気工業や住友電気工業などの光ファイバー・光デバイスメーカーは、素材や個別モジュールで高い技術力を保有しています。
しかし、300mmウェハラインで光集積回路と超伝導検出器を一括生産する商用ファウンドリ環境は国内に整っていません。国内の量子スタートアップや研究機関がプロトタイプから量産へ進む際、製造を海外ファウンドリに依存せざるを得ない構造が存在します。
超伝導材料を既存の半導体クリーンルームに投入する場合、金属汚染への対策や熱処理プロセスの整合性確保が技術的な障壁となります。研究開発段階の歩留まり管理と、ファブの生産ライン基準との間にあるギャップを埋めるインターフェース技術が求められます。
光量子ハードウェアのサプライチェーンにおいて、素材の提供にとどまるか、あるいは300mmウェハ対応の製造受託プロセスを確立できるかが、国内外の市場シェアを左右する分岐点となります。
部品標準化と受託製造の進展に伴う推奨アクション
商用ファウンドリによる量子チップ製造の進展を踏まえ、国内の開発部門や事業責任者が検討すべき工程は以下の通りです。
- フォトニクスPDKの共通化と検証
グローバルファウンドリーズなどの主要ファウンドリが提供する光集積回路向けプロセス開発キット(PDK)を取り込み、自社設計の回路パターンが300mmラインで再現可能かシミュレーション検証を実施します。
- 測定・パッケージング工程の内製化分離
光量子チップの製造が海外ファウンドリへ外部委託される流れを見越し、極低温環境下でのチップテストや高精度ファイバーアレイ実装など、後工程に特化した製造受託体制の構築を急ぎます。
- 材料サプライチェーンの規格適合
SiN成膜用前駆体ガスや超伝導ナノワイヤ用ターゲット材を供給する化学・材料メーカーは、大手ファウンドリの量産基準を満たす不純物管理体制の整備を進める必要があります。
出典: GlobeNewswire(Xanadu公式発表)
出典: Quantum Computing Report
出典: TIKR.com
