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Home > 基盤モデル (LLM/SLM)> DeepSeekがモデル据え置きで11点向上|国内Agent開発の投資配分
基盤モデル (LLM/SLM) 2026年10月29日
事前学習によるモデル巨大化競争 -> 強化学習と事後学習によるタスク完結率の特化開発 Impact: 83 (Accelerated)

DeepSeekがモデル据え置きで11点向上|国内Agent開発の投資配分

DeepSeekがモデル据え置きで11点向上|国内Agent開発の投資配分

ディープシーク(DeepSeek)とムーンショットAI(Moonshot AI)は2026年10月、モデル構造やパラメータ数を変更せず、強化学習を中心とするポストトレーニングのみで主要ベンチマークのスコアを最大11.1ポイント引き上げました。この計算資源の投下先シフトは、さくらインターネットの生成AI向けクラウドなどを利用して基盤モデル選定や追加学習を進める国内企業のAI投資配分に直結する変化です。

フロンティアラボのGPU投資配分と呼び出しシェアの激変

先端AIモデルの開発現場において、計算資源の投入先が事前学習からポストトレーニングへと移っています。米調査機関セミ・アナリシス(SemiAnalysis)が2026年10月に公表した推計データによると、先端AI研究所におけるGPU計算資源の配分比率は過去2年で大きく変化しました。

時期 事前学習(Pre-training) ポストトレーニング/強化学習 日常的な推論(Inference)
2024年第1四半期 67% 5% 29%
2026年第4四半期(予測) 7% 55% 38%

2024年初頭には7割近くを占めていた事前学習のシェアが、2026年末には1割未満へ縮小する見通しとなっています。代わって強化学習を軸とするポストトレーニングが計算リソースの過半を占める構成になりました。シャオミ(Xiaomi)で大模型チーム責任者を務める羅福莉(Luo Fuli)氏も、チャットボット開発期のGPU配分(研究3:事前学習5:ポストトレーニング1)に対し、自律型Agentの開発フェーズでは3:1:1、トップ層では1:1を目指すべきであると述べています。

この開発リソースの転換は、API利用の現場にも数字として現れています。オープンルーター(OpenRouter)の集計データによると、2026年10月19日から25日までの週における世界の主要AIモデル総呼び出し量は、前週比14.63%増の188兆トークンを記録しました。

【2026年10月19〜25日 世界AIモデル週間呼び出し量シェア】
総呼び出し量: 188兆トークン(前週比 +14.63%)
 ├─ 中国系モデル全体: 93.54兆トークン(世界シェア約49.8%、26週連続首位)
 │   └─ DeepSeek V4.1-Flash-1017: 33.6兆トークン(前週比 +801%、世界単一モデル首位)
 └─ 米国系モデル全体: 22.47兆トークン

DeepSeekが2026年10月17日に公開したスナップショット「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」は、公開直後の週に33.6兆トークンの呼び出しを記録しました。前週比801%増という急拡大を達成し、世界シェア首位となっています。

参考記事: DeepSeek-V4-Flashの仕組みと影響|AIデータセンター構造を変革する推論最適化のロードマップ

ポストトレーニング特化がもたらすタスク完結率と推論コストの分岐

2026年10月の一連のリリースで確認された性能向上は、ベースモデルの重み構造やコンテキスト長を据え置いたまま達成されています。

Moonshot AIが2026年10月23日に発表した「Kimi K3.1 Pro」は、総パラメータ2.8兆、活性化パラメータ1,040億、コンテキスト長100万トークンの基本構造を前身モデルから維持しています。同社は強化学習フレームワークやサンドボックス基盤を刷新し、下流タスク領域へ強化学習の計算資源を集中投下しました。

DeepSeekが公開した「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」も、9月10日発表のベースモデル(Causal Encoder-Decoder構造、読み込み時8B・書き出し時16B活性化)のアーキテクチャを変更していません。

ベンチマーク項目 V4.1 Flash(ベース) V4.1-Flash-1017 スコア変動
Terminal-Bench 4.0 31.2 42.3 +11.1
ProgramBench 20.3 29.1 +8.8
DeepSWE v1.1 74.2 77.0 +2.8
HLE(ツールなし) 36.8 42.6 +5.8

事後学習のみでスコアが跳ね上がる要因は、モデルの最適化目的の転換にあります。事前学習の損失関数である交差エントロピーは「次に来る単語の確率」を最大化するため、文法が整っていれば実行不可能なコードでも高スコアとなります。一方のポストトレーニングは、環境からの実行成否フィードバックを報酬関数として組み込みます。結果として「確率的に自然な文章」ではなく「タスクを完結できたか」を直接学習させることが可能になりました。

シンキング・マシーンズ・ラボ(Thinking Machines Lab)が公開した論文「On-Policy Distillation」によると、オンライン方策蒸留を活用した場合、強化学習の50分の1から100分の1の計算資源で同等以上の性能を別モデルへ転写できることが示されています。能力の獲得よりも複製のコストが劇的に低いため、ベースモデルを固定したまま反復改善を回す経済性が成立します。

ソフトウェアエンジニアリング能力を評価するDeepSWEにおいて、DeepSeek-V4.1-Flash-1017は1タスク平均0.2ドル(約32円)で77.0%の解決率を達成しました。GPT-6 AstraやClaude Opus 5といった他社フロンティアモデルが1タスクあたり2ドルから10ドル(約320円から1,600円)を要する中、出力トークンの短縮と高速実行によって1桁低いコストを実現しています。

ただし、この手法には前提条件が存在します。成否判定を自動化できる「検証可能な報酬環境」が不可欠となる点です。プログラムの実行、CADデータのレンダリング成否、ターミナルコマンドの終了コードのように、客観的テストが組める領域でのみ強化学習が機能します。自由文の要約や曖昧なビジネス交渉など、正誤判定をコード化できない領域では同等のスコア向上は得られません。

参考記事: 中国AI格安化の仕組みとは?DeepSeekとKimi K3が変える推論コストとAI実装のロードマップ

客観評価サンドボックスの有無が分ける国内AI実装の成否

事前学習モデルの巨大化による差別化が鈍化し、事後学習の質が性能を左右する構造は、国内企業の開発方針に再考を迫ります。

第一に、自前の大規模基盤モデル学習に固執する投資対効果が低下しています。ベースモデルの知識容量を示すHLEベンチマークにおいて、DeepSeek-V4.1-Flash-1017の42.6に対しClaude Opus 5は56.3を記録しており、基礎知識量の上限は依然として事前学習の規模に依存します。しかし実務の自動化率を測るAutomation-Benchでは、DeepSeekが60.5を記録し、Opus 5の50.3を上回りました。業務特化型Agentの構築においては、巨大な事前学習モデルを一から作るよりも、オープンウェイトモデルに自社固有の検証環境を組み合わせるアプローチが合理的です。

第二に、競争力の源泉が「GPUの保有数」から「テストケースと検証用サンドボックスの設計力」へと移行します。DeepSeekはV4.1-Flash-1017の開発において、アルゴリズムの新規開発は行わず、タスク合成パイプラインと検証環境の整備にリソースを集中させたと公表しています。さらにDeepSeek Harnessやテンセント(Tencent)のCodeBuddyといった特定の実行環境に合わせてモデル挙動を調整しました。

国内の製造業やSI事業者が自社業務向けにAgentを導入する場合、障壁となるのはモデルの選定ではなく、正誤を即座に判定するテストスイートの欠如です。単体テストや結合テストが未整備のレガシーコード環境や、仕様書と合致しているかを自動検知できない事務フローでは、強化学習の報酬ループを回せません。

参考記事: エージェント型検索のコストを1/100にする方法|Qwen3.5-4Bと強化学習によるGPT-5.6 Sol凌駕の…

エンジニアリング現場における技術選定と検証のステップ

事前学習とポストトレーニングの役割分担が明確化した環境において、技術責任者が進めるべき具体的な判断手順は以下の通りです。

1. 自社タスクの「検証可能性」の峻別

業務タスクを、客観的な成否判定がプログラムで記述できる領域と、人間による主観的評価が不可欠な領域に分類します。APIレスポンスの検証、コード生成、DBスキーマ移行、フォーマット変換など、終了判定テストが書ける領域のみを強化学習や事後学習の対象に選定します。

2. 実行サンドボックスと評価ハーネスの整備

モデルへ直接プロンプトを投げる構成を改め、実行コンテナ、ファイルシステム、成否判定スクリプトを結合した評価基盤を構築します。DeepSeekが示した通り、特定ハーネス(Claude Codeや自社専用基盤)に最適化されたモデル挙動の差を自社環境側で測定できる体制を整えます。

3. オープンウェイトモデルに対する方策蒸留の適用

高価なフロンティアモデルによる全件実行を避け、上位モデルで生成・検証した正解軌跡データを使い、小規模モデルへオンライン方策蒸留を行います。1タスクあたりの推論単価を1ドル未満へ抑え込みつつ、業務特化ベンチマークにおける完結率を安定させます。

出典: finance.biggo.jp
出典: kimi.ai
出典: huggingface.co
出典: thinkingmachines.ai
出典: officechai.com

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