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Home > 基盤モデル (LLM/SLM)> GoogleがGemini新モデルとロボティクスER 2を発表、AIエージェントと実世界タスクを強化
基盤モデル (LLM/SLM) 2026年8月5日
決定論的なプログラムによるロボット制御 -> 言語・映像推論による自律的なタスク遂行 Impact: 85 (Accelerated)

GoogleがGemini新モデルとロボティクスER 2を発表、AIエージェントと実世界タスクを強化

GoogleがGemini新モデルとロボティクスER 2を発表、AIエージェントと実世界タスクを強化

Gemini Robotics ER 2の登場がもたらす物理AIのルールチェンジ

Googleは2026年7月、推論モデル「Gemini Robotics ER 2」と3つの新型Geminiモデルを発表しました。

従来の事前定義型コードによるロボット制御に対し、自然言語と映像推論によるエンドツーエンドの自律操作を実現します。

デジタル空間の情報処理から物理空間の実作業遂行へ、AIの産業的価値が大きくシフトします。


VLAモデルと身体性推論が変革するロボット制御の仕組み

確定的なC++コードから「自然言語と映像による自律推論」への転換

従来の産業用ロボットや自動搬送車(AGV)の制御は、C++やPythonを用いて特定の動作を決定論的に記述する手法が主流でした。事前に定義された環境や一定の教示(ティーチング)作業を前提としており、配置や作業対象(ワーク)の形状が数センチ変わるだけでシステムが停止するという脆弱性を抱えていました。

これに対し、Google DeepMindが発表した「Gemini Robotics ER 2(Embodied Reasoning 2)」は、視覚と言語による空間推論やタスク計画を担うVLM(Vision-Language Model)アーキテクチャを採用しています。これにより、ロボットがカメラ画像から空間構造や物体の状態をリアルタイムに把握し、自然言語指示に基づいて「どの順序で、どのように手を動かすべきか」を自律的に推論・計画することが可能になりました。

このアプローチは、AIがWeb上のテキストや画像だけでなく、物理世界における物体の重量、摩擦、衝突リスクといった物理的制約を理解する「常識推論(Common Sense Reasoning)」を備え始めたことを意味しています。詳細はロボット基盤モデルとは?仕組みから最新動向・2030年予測まで徹底解説でも解説されていますが、特定のハードウェアに依存しない汎用的な知能レイヤーとして機能点が最大の特徴です。

Gemini 3.5/3.6ファミリーと新ロボティクスモデルの技術仕様

2026年7月のアップデートにおいて、Googleはデジタル空間の大規模AIエージェントを制御する「Gemini 3.6 Flash」などの新型モデル群と、物理空間のロボティクスに特化したモデル群を連携させる統合エコシステムを提示しました。

以下の表は、今回発表された主要モデルの役割と技術仕様の比較です。

モデル名 ベースアーキテクチャ 主な機能・技術的特徴 提供形態
Gemini Robotics ER 2 Gemini 3.5 Flash 映像ストリーム解析、モーメント特定、タスク計画、エラー検知・自己修復 パブリックプレビュー (API / AI Studio)
Gemini Robotics 2 (VLA) マルチモーダルVLA 全身運動制御(Whole-body control)、関節トルク・空間座標へのエンドツーエンド変換 アーリーアクセス(パートナー限定)
Gemini Robotics On-Device 2 エッジ最適化モデル ローカル環境動作、200件未満のデータで未知筐体・ハンド構造に適応 アーリーアクセス(パートナー限定)
Gemini 3.6 Flash Gemini 3.6 長文脈オーケストレーション、Tool Search、大規模マルチエージェント制御 GA(一般提供)

Gemini Robotics ER 2は、大型モデルと同等の高精度な物理推論を実現しながら、ベースモデルをGemini 3.5 Flashへ軽量化したことで、推論速度を大型モデルクラスと比較して4倍に高速化させました。

また、ビデオストリームから特定の操作瞬間(例:「部品を持ち上げた瞬間」「ねじが嵌合した瞬間」)をピンポイントで特定する「モーメント検索精度(Moment-Finding Accuracy)」において91.3%を記録しています。さらに、作業が現在どの段階にあるかを評価する「タスク進捗認識精度(Progress-Classification Accuracy)」は57.4%に達しました。これにより、作業途中で部品を落とした場合にAI自身が「失敗」を認識し、自動的にリトライ行動を取るクローズドループ制御(自己修復ループ)が実現します。

ハードウェアを選ばないプラットフォーム戦略と実機実証

Googleの戦略は、ロボットの筐体そのものを自社で量産するのではなく、他社製ハードウェアに対して「脳」となる共通OS・知能レイヤーを提供することに重点が置かれています。この点は、自社製造にこだわる一部の競合と対照的です。

実際の検証例として、以下の2事例が公表されています。

  • Apptronik社「Apollo 2」との連携: ヒューマノイドロボット「Apollo 2」において、単一のGemini Roboticsモデルから足・胴体・腕・5本指ハンド(SharpaWaveハンド)を含む全身制御(Whole-body control)を実行。歩行しながら荷物を持ち上げ、棚へ格納する連続動作を統合制御した。
  • Boston Dynamics社「Spot」との連携: 四足歩行ロボット「Spot」に搭載し、自然言語指示に基づいてポップコーン(お菓子)を取ってくるエリア捜索・アーム操作・物体回収をスムーズに実行した。

このようなVLAモデルの進化については、Google DeepMindが描くAIロボット、VLAで考えながら未知の状況に対応する仕組みとは?でも取り上げられている通り、ハードウェアの差分をモデル側が吸収する柔軟性をもたらしています。

さらに、デジタル世界でのワークフロー自動化を狙う「Gemini 3.6 Flash」等との連携により、例えば「ERPシステムで在庫不足を検知したデジタルエージェント(Gemini 3.6 Flash)が、物流現場のヒューマノイド(Gemini Robotics 2)にピッキングを指示する」という、デジタルと物理空間を跨ぐマルチエージェント連携が容易になります。この仕組みの基礎概念はマルチエージェントシステムとは?シングルエージェントとの違いや構築ステップで詳細に論じられています。


物理空間への本格導入を阻む3つの技術的絶対条件

Gemini Robotics ER 2は画期的な推論能力を示しているものの、製造・物流・医療などの本格的な産業現場へ導入するためには、まだ解決すべき技術的課題(Prerequisites)が存在します。

1. リアルタイム制御における「10msの壁」とエッジ推論遅延

ロボットが人間や動的な障害物と共存する環境で安全に動作するためには、制御ループのレイテンシを10ms〜50ms以下に抑える必要があります。急な飛び出しに対して100ms以上反応が遅れると、物理的な衝突や破損事故につながるためです。

現在、Gemini Robotics ER 2の高度な推論機能はクラウドAPI経由(Google AI StudioやGemini Enterprise Agent Platform)で提供されており、通信往復(RTT)を含めると100ms〜300ms程度の遅延が発生します。

この課題に対し、ローカル環境で直接推論を行う「Gemini Robotics On-Device 2」の重要性が高まっています。クラウド側でハイレベルな状況認識やタスク計画(1Hz〜5Hz周期)を行い、エッジ側の軽量モデルが具体的な関節制御や力制御(100Hz〜1000Hz周期)を担う「階層型推論アーキテクチャ」の最適化が求められます。クラウドとエッジの役割分担についてはAI推論インフラとは?CTOが知るべきアーキテクチャ設計が参考になります。

2. 物理データ(力覚・触覚)の枯渇とSim-to-Realの限界

Web上の膨大なテキストや画像を学習できるLLMと異なり、ロボットが受ける「力の加減(力覚・触覚:F/Tデータ)」のデータセットは決定的に不足しています。

透明なガラス製品の把握や、柔らかいケーブルの配線、精密なねじ込み作業といった「力加減の微調整」が必要なタスクでは、視覚情報(カメラ)だけでは限界があります。Googleが示すように「わずか200件未満のデータ(数時間の学習データ)」で新たな筐体に適応可能なオンデバイス学習技術は進歩していますが、これを力覚フィードバックへどう拡張するかが焦点です。

データ不足を克服するため、NVIDIA Isaac Simなどの高精度物理シミュレーター上で大量の合成データを生成し、それを実機へ適用する「Sim-to-Real」アプローチの進化が必須となっています。この問題設定は物理AI(Physical AI)の仕組みと実用化はいつ?直面する3つの壁でも指摘されている根深いボトルネックです。

3. 確率的推論のハルシネーション対策とセーフティ層(SIL3)の統合

LLM/VLAモデルは本質的に「確率的な予測モデル」です。デジタル空間のチャットボットであれば数%のハルシネーション(嘘や誤り)は許容できる場合がありますが、重量物を扱う産業用ロボットのハルシネーションは人命に関わる事故を引き起こします。

この問題に対処するため、Googleは新たな安全性ベンチマーク「ASIMOV-Agentic」を提唱しています。不安全なコマンドの自動拒否や、自身の推論結果に対する確信度が低い場合に「人間に確認を求める動作」をモデル自体に組み込む取り組みです。

現場実装においては、AIの出力をそのままモータに流すのではなく、AIモデルの外側にSIL3(Safety Integrity Level 3)認証を受けたハードウェアセーフティ層を独立して配置することが現実的な絶対条件となります。AIが誤ったアーム軌道を生成した場合でも、外付けの確定的な安全コントローラが干渉を検知して緊急停止させる二重化構造が不可欠です。


技術責任者が2026年〜2027年に追うべきKPIと評価指標

AIロボティクスの検証や導入推進を担うCTO・事業責任者は、抽象的な「実証実験(PoC)」にとどまらず、以下の具体的な技術指標(KPI)を検証基準として設定すべきです。

1. タスク進捗認識精度(Progress-Classification Accuracy)の改善率

  • 現状: Gemini Robotics ER 2で57.4%
  • 判断基準: 現場導入の基準として75%以上を要求。自律的に失敗を正しく検知し、人間の介入なしにリトライを実行できる割合(リカバリー成功率)が直結するためです。

2. エッジ推論におけるEnd-to-Endレイテンシ

  • 現状: クラウド経由で100ms〜300ms、On-Deviceモデル単体で数10ms
  • 判断基準: 高速な動的環境(ピッキングラインや共存空間)では、センサ入力から出力までのレイテンシ30ms以下の維持率を100%に保てるかを評価指標とします。

3. 未知環境・新規筐体への適応データ数(Few-shot Adaptation)

  • 現状: Gemini Robotics On-Device 2で200件未満(数時間分の動作データ)
  • 判断基準: 新たな製品ラインや未経験の治具(ジグ)に対し、50件以下の教示データ(1時間以内のキャリブレーション)で95%以上の動作成功率を達成できるかをライン展開のGOサインとします。

4. 現場導入・ライン変更リードタイムの削減率

  • 現状: 従来の確定的なロボットティーチングで数か月〜数千万円のエンジニアリングコスト
  • 判断基準: 自然言語プログラミングとVLAモデルの適用により、設定変更や新規ライン立ち上げにかかる工数を従来比で70%以上削減できるかをROI測定の指標とします。

AIオーケストレーションと物理制御を統合するロードマップ

Googleが発表したGemini Robotics ER 2および新型Geminiモデル群は、AIがデジタルな処理装置から「実空間で機能する身体(Embodied AI)」へと移行したことを示す明確なシグナルです。

従来型の「専用プログラムによる固定ロボット」の価値は急速に低下し、サードパーティ製ハードウェアに最先端のVLAモデルを組み込み、現場の環境変化に即応できるシステムが今後の標準となります。

技術責任者・事業責任者が明日から取り組むべきアクションは以下の通りです。

  1. 実機データのキャプチャ基盤構築
  2. 既存の製造・物流ラインにおけるカメラ映像や操作ログを、VLAモデルのファインチューニング用データとして蓄積するデータパイプラインを構築する。

  3. Gemini API / AI Studioにおけるパブリックプレビューの技術検証

  4. gemini-robotics-er-2-preview等を用いて、自社の現場映像に対するモーメント検索(91.3%精度の検証)や作業進捗認識の適用可能性を評価する。

  5. クラウド推論とエッジセーフティを分離したシステム構成設計

  6. 上位のタスク計画(クラウド/Gemini ER 2)と、下位の確定的な安全制御(エッジ/SIL3コントローラ)を切り分けたアーキテクチャの標準化を進める。

デジタル空間のAIエージェント構築と物理空間のロボティクス制御を別個の施策として捉えるのではなく、単一のAIオーケストレーション基盤として統合する戦略設計こそが、次世代の競争力を左右します。


出典: Google AI Updates July 2026
出典: Google DeepMind Gemini Robotics ER 2
出典: Google DeepMind Gemini Robotics 2
出典: PRONAVi AI

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